(うそぶ)いて

音が失せ 視覚の不思議をなぞるように
初雪が舞う
睫にかかる結晶が
すべては 一夢の(うち)
なのだと告げる
58年・・・ 確かに
世を忌み 人との関わりを棄ててすでに5年
ふわりと
夢の余白で微睡んでいるのに
ただ気づいていないだけなのかもしれない
 
東北の重く昏い雪の日は
燃やしてしまうにはうってつけなのだ
ここに来たときから
場所は白鳥駅近くの川岸と決めている
リュックに詰められるタンクとライターも用意した
後はしんしんと降る雪の日を待って
事をなすだけ
 
 月光の蛹になって眠り入る
 銀河(かわ)の畔の
 死の薄き夢
 
そして 夢の中に戻る

一夢の中 

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