光円錐の外を
ホーキングが他所と呼んでいるのを知って
なにか禅にでも通じているのかとも思え
ひとり妙に感心したのを覚えている
パスカルの「沈黙」同様に
ちょうどその頃だった わたしは
絵を通り抜けたことがある
・・多分
六条御息所ではないが
二十歳になる彼女の部屋に現れたものがいったい何であったのか
生霊などというおどろおどろしい言葉を使わなくても
今なら物語ることができる
もっとも もう二十年も前の出来事である
その夜 薄の高原からすーっと墜ちてしまいそうな碧い空に
レイまでくっきり映すまん丸な月が浮かんでいた
ひょっとしたら一生に一度観られるかどうか
今だからこそ そう思える月夜だった
ここを閉じ 絵の際を抜けて
月蝕に染まる
薄の先は 他所の夢
そしてもう一度絵を抜けることになる
今度は1-1が無であるような
地球照の時間の外へ